一人。お気楽街道

究極の一人好きの作者の日々です。お気楽でちょっと役に立つかもしれない日常情報をお届けします。

舞浜で一人深酒二十歳「終電」

二十歳になってからというものの、BARにぞっこんだ。若い女性一人で入るには少々敷居が高いと感じるかも知れないが、足を踏み入れると独特の煌めきが誘惑してくる。
金曜の夜もそんな気分だった。早く雑踏から外れたくて舞浜駅の人波から逸れた。駅構内に重厚な扉が異彩を放つ店内へと足を踏み入れた。
外に掛けられているメニューを見た時一杯千円以上し、洒落た街はとにかく単価が高い。田舎育ちの私は若干驚くものの大都会故の地価・所得の違いから来ると考え、妙に納得した。
何回か訪れてもメニューのカタカナは慣れない。アレキサンダーが唯一自信をもって好きだと言えるお酒だ。初BAR訪問時にチョコレート系で適当にと伝えたところグラスホッパーが出てきた。チョコミントアイスのまさにそれで、溶けたアイスと表現したくなった。それほどお酒に無知だったのだ。
家に帰りスマホで調べて名前を知った。
伊坂幸太郎の小説と同名で妙にテンションが上がったのを覚えている。
話を舞浜に戻そう。店内では黒のマッシュボブが少し目にかかった若い女性と、渋い男性が主に対応してくれた。
何処も変わらず、ずらっと並んだリキュールは圧巻だ。大きめの日本酒のビンがいくつか置いてあったが、浮くことなく洋風の空間にマッチしていた。
おつまみで頼んだ4種類のチョコレートの内1つには「竹鶴」が使われていた。主張しすぎない甘さが心地よく、銀粉で刺繍のような模様が繊細で食べるのが憚られた。
二枝のフォークもセットで出され、手でチョコレートを食べることが多い私はしっかりした固さも相まって苦戦した。
小さなそれをチビチビ噛りながらホワイトレディを飲むのが丁度良かった。
実を言うとアルコールの風味が強く其れほど進んで飲むには味覚に合わない。
舌が単純な私には「甘め」だというそれもとても苦く感じた。一度飲んだことがあるのだから当然味の想像はつく。
アルコールが強い快感が蘇り、無意識に頼んでいたんだと思う。
二回目に訪づれた他の所でアレキサンダーを飲んでとても美味しかったからまた頼んだ。やはり味覚が子どもだ。
スマホで調べた写真には二層になっており、上にふわふわの生クリームが覆い被せられていた。出されたグラスはカカオの甘味と氷が混ぜられしゃきしゃきしていた。人によって作り方が微妙に異なるのも面白い。
少々ハイペースかなと思ったが、美味しいものはすぐなくなる。
フルーツ系がブレンドされたものや、ロングアイランド・アイステイーも飲んだ。ザクザクの細かい氷が円柱形のグラスにたっぷりと詰め込まれ、いくつかこぼれていた。紅茶の味がするが、茶葉は使われていない。ウオッカやジン‥度数が高いお酒代表が融合し、とても甘口になるから不思議だ。
レディ・キラーとも呼ばれるが、ジュースのように美味しく飲んだ。特に誰にもキラーされなかったが。
そんなんで深夜1時を回ってしまった。6時間近く滞在していたであろう、会計は1万を越えた。途中経過で金額を訊いたのは正しかった。そうでなければ、終電を逃すという初めての事態に対処できなかっただろう。
完全に迂闊だったのだが、いつもの事だ。突飛な行動力で2駅隣にたどり着いた。本当に運良く、野宿は避けられた。所持金2万程残っていたので、ネットカフェで明け方7時まで滞在した。こんな非常事態にもかかわらず、一人でのびのびできたことへの喜びが大きかった。
オタクを自称している(誰にも宣言していないが)癖にネットカフェは初入店だった。
パソコンが目の前にあるのにキーボードが見当たらなかったので、店員さんに訊いた。引き出しに隠れていて、これなら落として壊さないし、コンパクトだ。自分用にパソコンを購入したら、採用しようかな。
すぐに寝た方が良かったのだが、目の前にあると使ってしまうのが人間の性というもの。結局、更に夜更かしをしYouTubeで音楽を聴きまくった。ヘッドフォンが少しブカブカだったが 、柔らかい肌触りで快適だった。
母から彼氏でもできたのかと要らぬ推測をされ少し困惑した。年頃だからといって、何でもそういう事に結びつけるのは如何なものか。
翌朝7時。ビックリするくらいスッキリと目覚めて朝食を食べずに建物を後にした。
泊まる前に買った簡易充電器で回復させ、意気揚々と帰路へ着いた。
二十歳にもなって一人で外泊をしたのは初めてだったので、身軽さが癖になりそうだ。
そののち、家の近くの駅で朝っぱらからどんぶりの蕎麦を食べて、買い物に向かう驚異のタフさに自分で呆れたのは別の話し。